アフラックの『医療保険 EVER Prime』は、同社のブランドEVERシリーズの2021年版だ。新商品になるたびに適度にバージョンアップしており、まとまりのある保険に仕上がっているものの、「なんでそれ付けたの?」という特約もある。
なんのことかって? 健康祝金のことだよ!!
……と、健康祝金を求めている人には申し訳ないが、うさたんはあのオプションには大反対だ。では、この保険を「保障内容」「給付条件のわかりやすさ」「保険料」の3つの観点から説明しよう。
評価の概要
メリットだと思った点
- 日帰り入院でも10日分の入院給付金がもらえる(とはいえ微妙)
- 必要な特約を商品の垣根を超えて追加できる
- 三大疾病のがんは悪性新生物のみを保障する
- 急性心筋梗塞・脳卒中の給付条件は入院のみ
デメリットだと思った点
- 日帰り入院でも10日分の入院給付金がもらえる
- 新設された健康祝金が罠
- 180日以内の再入院は有無を言わさず1回の入院になる
- 保険料が安いとは言えない
- 先進医療特約が更新型である
保障内容
アフラックは第三保険の先駆者であり、医療・がん保険の分野では期待しているのだが、どうも微妙なラインを出してくる傾向がある。
(△)日帰り入院でも10日分の入院給付金がもらえる
インパクトとしては強烈である。入院給付金を1万円に設定していれば日帰り入院だけで10万円もゲットできるのだ。医療費を差し引いてもよほどのことがない限りおつりがくるだろう。
しかし、その代わり保険料が高めになるのと、医療保険は家計のピンチに備えるものであって、儲けるためのものではないという原点に立ち返りたい。日帰り入院はもちろんだが、そもそも短期入院は大きな出費になりにくいのだ。
短期入院を手厚く保障する(とアピールする)医療保険は、一つ残らずこの矛盾を抱えている。
(○)必要な特約を商品の垣根を超えて追加できる
医療保険 EVER Primeは、『医療保険 EVER プラス Prime』という特約オプションの集合体と連携できる商品だ。ライフステージの変化や心配ごとに合わせて、特約を後からでも付加できる。
「だからどうした」と思うかもしれないが、一般的に医療保険というは、その商品単体に特約が紐付いている仕組みになっている。その商品が時代遅れになれば、特約も時代遅れになるのが通常だし、販売停止になれば特約も消失してしまう。
しかし、医療保険 EVER プラス Primeは単体で存在している特約群なので、昔入った医療保険だろうが、これから加入する医療保険だろうが、合体の対象となる医療保険の影響を受けにくいというわけだ。
これが、医療保険 EVER プラス Primeが一味違うところである。特約を自由自在にカスタマイズできる商品はほかにもあるが、商品の垣根を超えて、また販売時期の垣根まで超えて追加できる特約は珍しい。
ただ、代わりに特約料がやや高めになるのは伝えておきたい。
(○)三大疾病のがんは悪性新生物のみを保障する
がんになって家計をピンチに追い込むような医療費がかかるのは悪性新生物の場合である。上皮内新生物という軽微ながんは除去すればおしまいなことが多い。
上皮内新生物まで保障の幅を広げないということは、その分保険料を圧縮することにつながるので評価ポイントである。
(×)新設された健康祝金が罠
健康祝金は、「○年間に1度も保険請求がなければ君は健康だ!お祝いしちゃう!」といった名目でおりる一時金の総称だ。条件は各社商品によって違い、医療保険 EVER Primeでは「3年間で10日以上の入院をしなければ」となっている。
健康祝金の額は入院給付金日額の5倍。公式サイトのシミュレーションでは5,000円か1万円かを選べるので、最大5万円もらえる計算だ。
健康な若い人なら10日以上の入院をすることま稀なので、「おいしい」と思うかもしれない。しかし、そのお祝い金は保険会社が自腹を切ったものではない。
下記のシミュレーションを見てほしい。健康祝金あり・なしの年齢別の保険料差(月払)だ。入院給付金日額は5,000円とした。
年齢 | 健康祝金あり | 健康祝金なし | 差額 |
---|---|---|---|
30歳 | 男性:3,469円 女性:3,677円 | 男性:2,734円 女性:2,947円 | 男性:735円 女性:730円 |
40歳 | 男性:4,590円 女性:4,424円 | 男性:3,830円 女性:3,679円 | 男性:760円 女性:745円 |
50歳 | 男性:7,273円 女性:6,185円 | 男性:6,478円 女性:5,445円 | 男性:795円 女性:740円 |
たとえば、40歳の男性が健康祝金ありで加入した場合、760円のプラスなので、3年間の総支払額が下記の額だけ増える計算になる。
・760円(差額)×12か月×3年=2万7,360円
健康祝金は2万5,000円だから、おい!2,360円のマイナスが出ているじゃない!!
保険会社から多めに徴収された挙げ句、無事に3年間過ごしてご褒美をもらっても損をしている謎設計なのだ。当然ながら、3年間のどこかで10日以上の入院をすると差額の保険料はすべて没収……。
まったく意味がわからないため、健康祝金はアウトオブ眼中(古い)以外の何者でもない。
(○)がん診断給付金の給付間隔が1年に1回(通算6回)
現状のがん保険またはがん特約において、がん診断給付金の給付間隔は、短くて1年、長くても2年だ。したがって1年に1回受け取れる設計は良いと思う。
「通算6回しかもらえない点が不安」と評価する人もいるだろうが、6回ももらえたら十分だろうと私は思う。
給付条件のわかりやすさ
いくら保障内容が優れていても、給付条件が複雑なものはユーザーに優しくない。
(×)180日以内の再入院は有無を言わさず1回の入院になる
多くの医療保険は180日以内に再入院しても、入院の理由が違うなら別々の入院としてカウントするが、アフラックは「前回の入院の続き」扱いになってしまう。
これは先代の看板商品『ちゃんと応える医療保険EVER』でも同じで、アフラックが(なぜか)頑なに変えない給付条件だ。
このルールでは、たとえば胃潰瘍で14日間入院した人が、180日以内にまったく別の病気で入院しても、入院のカウントは「15日目から」になってしまう。1入院につき60日を保障する医療保険だと残り45日だし、30日型だと残り半分だ。
まあ、「わかりやすさ」が判定基準なので、わかりやすくはあるけれど、ダメだということがわかりやすいという意味で評価した。
180日以内の再入院についてはこちらでも解説しているので、よければ参考にしてほしい。
→勘違い注意!なにかとクセが強い医療保険の「入院」給付の数え方
(○)急性心筋梗塞・脳卒中の給付条件は入院のみ
急性心筋梗塞・脳卒中は「治療を目的として手術または入院をしたとき」と非常にシンプル。しかし、急性心筋梗塞は心疾患の一つでしかないし、脳卒中も脳血管疾患の一つにすぎない点は知っておきたい。
心疾患・脳血管疾患と範囲を広げると「治療を目的として手術または継続10日以上の入院をしたとき」と、少し条件が厳しくなる。昔は30日や60日なんて設定がまかり通っていたことを思えば、随分緩和されたのだなと感慨深くなる。
保険料
肝心の保険料だが、この保険は日帰り入院でも手厚く給付する、いわゆる「初期給付型」であるため期待はできない。
(△)保険料が安いとは言えない
保険料は「(×)新設された健康祝金が罠」のくだりで試算した通り。健康祝金なしの金額を抜粋すると次の額になる。
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
30歳 | 2,734円 | 2,947円 |
40歳 | 3,830円 | 3,679円 |
50歳 | 6,478円 | 5,445円 |
保障内容をまったく同じにはできないため完全な比較はできないが、他社であれば30歳・男女で1,500円~2,000円前半で抑えられる保険はたくさんある。
この保険が少々高いのはユーザーの心をくすぐるような設計に降った結果であり、致し方ないとも言えよう。超ど短期入院でも手厚く保障してほしい人には嬉しいが、うさたんのマネー哲学では手を出したくない保険である。
(×)先進医療特約が更新型である
先進医療特約のスペックは全社でほぼ横並びの状態だが、終身型か更新型かでは差がある。
医療保険そのものは定期型のほうが合理的だが、先進医療特約はどちらのタイプでも月に100円程度なので、だったら保険期間中ずっと変わらないほうがよいだろう。
将来、先進医療特約の付加保険料が爆上がりしている可能性は低いと思うが、今より安くなる可能性も低いと思うので、契約時に固定されるほうがよいだろう。
【関連】→ウサギでもわかる「先進医療」とは
まとめよう
- ど短期入院を手厚く保障する保険は掛金が高いので微妙
- 特約たちを後からでも追加できるのはアフラックのよいところ
- 入院祝金が悪い冗談みたいな設計
- 終身型なのでうさたんには不要
短期にも長期にも使え、必要に合わせて保障を選べる点はよいのだが、相変わらず微妙な一手を差し込んでくるあたりアフラックらしい。もっとも問題視している健康祝金は外せるものの、どうしたってマイナスになるお祝いを紛れ込ますなよという意味でおすすめはできない保険とする。