【結論】貯蓄が200万円ない人には医療保険が必要

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いつからか、医療保険は不要論が飛び交うようになった。根拠の多くは「高額療養費制度(後述)が充実しているから」なのだが、本当にそうだろうか? 

確かに、「ほとんどの人に医療保険は不要」または「不要になる」と思う。だが、生活防衛資金がたまっていない人にとってはそうではない。

安易な医療保険不要論は危険だと考えるので、この記事では医療保険の必要性について考える。

高額療養費制度を使えば自己負担は大幅に減る

高額療養費制度についての詳細は、こちらの用語集で解説しているので、ここでは基本を押さえておく程度にする。

高額療養費制度とは、月初から月末までの1ヵ月にかかった健康保険がきく医療費のうち、高額になりすぎた自己負担分を払い戻してくれる公的制度のことだ。

「高額になりすぎた」の上限は年齢や所得によって違うが、一般的な年収の70歳未満の人(約370~約770万円)なら、たとえ総医療費が100万円だったとしても、次の計算式で21万2,570円が払い戻される。

《計算式》

8万100円+(100万円-26万7,000円)×1% = 8万7,430円
100万円×30% – 8万7,430円 = 21万2,570円

これだけでもすごいのだが、さらにすごいのが「多数該当」という仕組み。1年(直近12ヵ月間)以内に3回以上、高額療養費に該当する自己負担があると、4回目からはさらに自己負担額が軽減されるのである。同じ例(70歳未満・約370~約770万円)の人なら、4回目以降の自己負担は4万4,400円に下がるのだ。

1ヵ月以上入院する確率は2割以下

高額療養費制度を利用したときの自己負担額が分かったところで、連続して入院する確率を見てみよう。入院したときの自己負担額は1ヵ月約8〜9万円だよ、4回目からは4万ちょっとになるよ、と言われても、長期入院する確率が高ければ負担には違いないからだ。

そこで、厚生労働省の「患者調査の概況(2017)」から入院日数の累積割合を調べてみたところ、入院した人の半数が10日以内に退院していることが分かった。下記のデータを見てほしい。

  • 1日未満:3.4%
  • 2日:15.1%
  • 4日:30.5%
  • 8日:51.5%
  • 15日:69.4%
  • 20日:76.3%
  • 25日:80.8%
  • 30日:83.9%
  • 40日:88.1%
  • 50日:90.6%

入院してから退院するまでの期間の平均(平均在院日数)は減少傾向にあるとはいえ、ここまで短期入院化が進んでいるとは思わなかった。

入院費が膨れ上がるかどうかは(手術の有無や種類もあるが)入院日数と連動するものなので、ほとんどの人が1ヵ月約8万円、2ヵ月入院しても約16万円の自己負担で済んでいることになる。

さらに、会社員なら給料の2/3が1年6ヵ月も保障される「傷病手当」もある。ここまで”至れり尽くせり”の環境が整う日本で「民間の医療保険なにそれ意味分かんない」という考えが成り立つのは自然だと私は思う。

待て!入院したときの自己負担額の平均は月21万円だぞ!という反論

ところが、生命保険文化センター「生活保障に関する調査」/令和元年度によれば、入院時にかかる自己負担費用の平均は約21万円、1日あたりでは約2万3,000円らしい。入院した人の半数が10日以内に退院しているのは述べたとおりなので、めちゃくちゃ大雑把に考えれば大体の計算は合うことになる。

しかしだ。生命保険文化センターの調査には「高額療養費制度を利用した場合は利用後の金額」という注釈がある。この一文はクセモノだ。なぜって、これだけでは「高額療養費制度を利用するまでもなかった人」なのか「高額療養費制度の存在を知らなかった人」なのか「知っていたけど使わなかった人」なのかの詳細が分からないからだ。

そこでうさたんは、生命保険文化センターの窓口で問い合わせてみた。すると予想通り、この注釈にはさまざまなケースが該当するとの返答だった。もっとハッキリ言えば、「そこまでの集計はしていない」とのこと。

……とすると、この調査で出た数字は話半分で聞く必要があるのではないか。別に生命保険文化センターさんを責めているわけじゃないよ(笑)。あくまで、データとしての信憑性が下がったという個人の感想である。

詳細が分からない以上、入院したときにかかる医療費の自己負担額は、月初から月末までを区切りに考えると約8万円だという計算が成り立つ。仮に4ヵ月入院した場合でも、「約8万円×3ヵ月+約4万4400円」で30万円未満だ。1年以上の長期入院でも、同じ計算式で約80万円あれば足りる計算になるわけだ。

じゃあなぜ200万円が必要なのか?

では、なぜ200万円も必要だとうさたんは言っているのか。それは療養中にかかる費用が、医療費だけではないからである。

日用品などの消耗品にはじまり、家族がいれば見舞や付き添いにかかる交通費もかかるだろう。大部屋ではなく個室を利用するなら差額ベッド代(特別療養環境室)も必要になる。高額療養費制度は健康保険内の治療費にしか適用できないからだ。

療養中の収入減についても計算に入れなければいけない。会社員なら1年6ヵ月間の傷病手当金を受け取れるが、自営業者にそんなものはナッシングだ。

あれこれ想定すると100万円では心細く、せめて150万円、200万円もあれば安心だろうという目算である。

こういうお金のことを生活防衛資金と呼ぶ。万一のリスクに見舞われても生活を破綻させないための資金だ。ファイナンシャル・プランニングの世界では「給与の3ヵ月分」が相場とされているが、長期入院のリスクまでを想定するなら多めに用意したほうが安心だ。

結論:貯蓄がない人に医療保険は必要!

保険はまさに「不幸の宝くじ」であり、確率は低いながらも引いてしまう可能性はあるわけだ。突然、病気やけがで働けなくなって収入がストップした場合、貯蓄がなければ家計が破断してしまう。

ただし、ある程度の貯蓄があれば過度に恐れるものではない。小さな子どもがいる場合の死亡保障や、他人の身体やモノを傷つけてしまった場合の損害補償とは比べ物にならないリスクと言えよう。

せめて150万円、できれば200万円ほどの生活防衛資金がたまるまでは、掛け捨ての安い医療保険で備えることをおすすめする。

え? 終身型の医療保険はいらないって? うさたんは不要だと考えるぞ。生活防衛資金があれば対処できるのに、なにが悲しくて一生分の保険料を均等払いしなくてはいけないのか。

実は保険商品を作る保険会社の人も、本当は掛け捨てで十分だと理解していながら終身型を作っているものだ。なぜって、そのほうが売れやすいから。消費者は条件反射で掛け捨てを嫌うから、人気を取る意味で終身型を作っているんだよね。

【参考文献・URL】

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