払い込んだ保険料のうち、使わなかった保険料が返ってくる終身医療保険を楽天生命が発売した。同社が販売するベーシックな医療保険『楽天生命スーパー医療保険』の保障内容に「健康還付特則」を加えた形だ。
この手の保険、どこかで聞いたことはないだろうか? そう、各誌で酷評されている東京海上日動あんしん生命の『メディカルKit R』の二番煎じである。
評価の概要
冒頭で述べた通り、この保険は『スーパー医療保険』に「健康還付特則」を付けた商品なので、中身は基本的に同じだ。したがって、主なメリット・デメリットは『スーパー医療保険』のレビューと同じである。
詳しくは該当ページで確認していただきたい。
メリットだと思った点
- 楽天スーパーポイントが貯まる(積極的な楽天ユーザーには嬉しい)
- がん診断給付金の給付間隔が1年に1回(通算6回)
- 急性心筋梗塞・脳卒中の給付条件が入院のみ
- ネット申込ができる
メリットとして付け加える点はない。
デメリットだと思った点
- 還付型の医療保険である
- 保険料が安いとは言えない
- 終身型である
- 主契約に放射線治療・骨髄ドナー保障がある
- 短期保障に力を入れている
- 180日以内の再入院は1回の入院になる
- 通院特約が入院給付金日額の60%までしか出ない
- がん診断給付金が上皮内新生物まで保障する
- 急性心筋梗塞・脳卒中の対象疾病が狭い
- 先進医療特約が更新型である
逆に、デメリットの追加点はある。以下より詳しく解説したい。
還付型の医療保険とは? 使わなかった保険料が戻ってくるってどんなしくみ?
え? 還付型医療保険?! メディカルKit Rの二番煎じ?? といった人もいるだろうから、この保険のしくみを解説しておこう。
30歳の人がこの保険に入ったとして、 月払保険料が6,960円だったとする(公式サイトより)。その場合、保険料は60歳まで払い込む契約になるので(正確には契約時の年齢に応じて異なる)、払込金額の合計は
・6,960円×12ヵ月×30年=250万5,600円
という計算になる。ここまではいいな?
で、この人が健康そのもので1回も保険の世話にならなかった場合、この250万5,600円が「健康還付給付金」として丸々バックされるわけだ。掛け捨てのはずの保険料が返金されるんだから、嬉しいよな。
しかし、だ。入院などをして保険金を受け取ってしまった場合、その額が差し引かれた分が返ってくる。受け取った給付金が20万円だとすると、230万5,600円が手元にバックされる。ふむ、でも戻ってくるだけマシだな。
……と、思ってんだろ?
そんなものは欺瞞だということを、うさたんが証明しょう。
メリットは限りなく少ない
得することはほとんどない。うさたんがこう思う根拠を次に挙げる。
1.結果的に自分で貯蓄しているのと変わらない
30年間かけて払い込んだ保険料が250万円だったんだよな。で、病気にならなかったら250万円が無傷で戻ってき、病気になったらかかった費用分を引いた分が戻ってくるんだよな。
それ、貯金と変わらなくね?
だったら、30年もの間、増えもしない、下ろせもしない保険会社に預けるより、いつでも引き出し自由な銀行口座を作って積立貯金をするほうが利口じゃね?
まあ、「貯蓄は三角、保険は四角」というので、積立額が低い間に病気になったら保険のありがたみを感じるだろう。しかしこの国には高額療養費制度があるし、よほどのことがないかぎり家計をぶち壊すことにはならない。
つまりこの保険の使い所は、入ってすぐに病気やケガをして給付金を受け取れる状況になったとき、だけだ。
2.健康還付特則があることで保険料が高くなる
上記のとおり、こんなしくみにメリットはほとんどない。一見お得な保険にみせている健康還付特則がついているおかげで、通常の『スーパー医療保険』よりも保険料が2倍弱高い。
【比較条件】
- 30歳男女
- シンプルプラン
- 入院給付金日額10,000円、手術給付金の型:Ⅰ型
- 8疾病入院支払限度拡大特則付加、保険期間 終身
- 通院特約付加(通院給付金日額6,000円)、先進医療特約2018付加(※スーパー医療保険)
スーパー医療保険 | 男性:3,990円 女性:4,170円 |
スーパー医療保険 戻るんです | 男性:7,440円 女性:7,640円 |
先進医療特約のあるなしに違いがあるので正確な比較ではないが、それでも価格差はご覧の通りだ。
3.健康還付特則が消滅したあとも保険料は変わらない
健康還付特則は、健康還付金を受け取る所定の年齢(60歳や70歳など。契約時の年齢に応じて異なる)で消滅するわけだが、その後も保険料は変わらない。健康還付特則があるために高くなっていた保険料が、それがなくなっても安くならないなんてモヤモヤしないかい?
健康還付特則という商品を消費したのだから当然かもしれないが、意地悪な見方をすれば、健康還付特則がなくなる所定の年齢以降から死ぬまでの、割高な設定のままの終身保険料で儲けてんじぇねえのこいつら?という気持ちにもなる。
4.物価の上昇に対応できない
これはこの保険だけに限ったことではないが、将来インフレでお金の価値が下がってしまうと、使わなかった保険料が返ってきてもその価値は半減している。この点を見ても、自分の手元で管理するほうがリスクヘッジができるだろう。
うさたんの結論:いらん
この保険の骨格は『楽天生命スーパー医療保険』なので、「戻るんです」の特徴はこんなもんだろう。結論は、いらん、だ。うさたんとしては全然おすすめできない。
メディカルKit Rとどちらがお得かを比較してもよかったが、この保険にお得さを感じないためやめておいた。
ある雑誌では「こんなものは保険ではない」と評するFPも見かけた。さすがにそれは言い過ぎだと思うが、マイナス評価を下す点では賛成する。
最後に、関係ないが、戻るんですって「写ルンです」から連想したに1万ペリカ。
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