楽天生命の『医療保険1095α(アルファ)』は、商品名が表すとおり1入院の保障限度日数が1,095日もある高倍率ズームレンズみたいな商品だ。
50歳以上でないと定期型に入れないというツッコミどころはあるが、終身型の医療保険の中なら悪くない。最も警戒すべき長期入院のリスクに対応できるからだ。
評価の概要
この保険は、同じく楽天生命が取り扱う『スーパー医療保険』を土台にカスタマイズされたものだ。したがって、主なメリット・デメリットは『スーパー医療保険』のレビューと同じである。
赤字で示したもの以外は該当ページで確認していただきたい。
メリットだと思った点
- 3年以上の入院にも備えられる
- 定期型プランがある
- 楽天スーパーポイントが貯まる(積極的な楽天ユーザーには嬉しい)
- がん診断給付金の給付間隔が1年に1回(通算6回)
- 急性心筋梗塞・脳卒中の給付条件が入院のみ
デメリットだと思った点
- 50歳以上は終身型プランを利用できない
- ネット申込ができない
- 短期保障を外せない
- 主契約に放射線治療・骨髄ドナー保障がある
- 180日以内の再入院は1回の入院になる
- 通院特約が入院給付金日額の60%までしか出ない
- がん診断給付金が上皮内新生物まで保障する
- 急性心筋梗塞・脳卒中の対象疾病が狭い
- 先進医療特約が更新型である
- 保険料が安いとは言えない
保障内容
『スーパー医療保険』にはないメリット・デメリットを中心に挙げていく。
(○)3年以上の入院にも備えられる1入院1,095日保障!
平均在院日数が短縮化している昨今、入院しても1〜2ヵ月で退院できることがほとんどだ。事実、厚生労働省の患者調査によれば、8割の人が30日以内に退院し、9割の人が50日以内に退院している。
入院しても1〜2ヵ月で退院できるのだから医療保険の必要性は低いというのがうさたんを含む医療保険不要論者の考えだが(そ、そうだよなみんな?)、運悪く残り1割に入ってしまうと1年以上の長期入院もあり得るわけだ。
公的制度には高額療養費という最強無敵のお助け制度があるが、さすがに1年以上の入院となると家計へのダメージはデカイ。だから確率は低くても長期入院は警戒すべきリスクなのだ。
その意味で、1入院1,095日まで保障してくれる『医療保険1095α』は優秀だと言える。昨今の入院事情に合わせた少額の保障なんてナンセンスだ。保険は、いざというときに自分では対処できない経済的リスクに備えて加入するものなのだから。
(△)短期保障を外せない
しかし、うさたんに言わせれば無駄もある。備えたいのは長期入院のみなので、入院1日目からの保障などいらない。
5日以上入院して退院した場合に受け取れる生存給付金(1万5,000円または3万円)なんてのもあるが、同じ理屈でうさたんには不要に思える。せめて特約扱いにして選ばせてほしい。
9割の人が60日以内に退院するのだから、せめて61日目、もっと言えば90日目や120日目以降から保障される設計でもよいくらいだ。そうすれば短期入院を保障しなくてよい分、保険料も下がるしな。
実は、その手の医療保険は『楽天ロング』というペットネームで販売されていたが、公式ページから姿を消してしまった。まあ、売れなかったんだろうな……。
給付条件のわかりやすさ
下記は楽天生命の医療保険に共通しているデメリットだが、大事なことなのでもう一度言っておく。
(×)180日以内の再入院は1回の入院になる
『医療保険1095α』は、再入院を「理由にかかわらず前回の入院の続き」とみなすルールを敷いている。
例えば、私に負けたかめがストレスのため「胃潰瘍」で30日入院したとしよう。そして不幸なことに、退院してから180日以内に「盲腸」で10日入院した。
すると、前回の入院とはまったく関係ない疾病なのに、前の入院日数の「続き」とみなされてしまう。残りは1,055日になるわけだ。
それでも1,055日あるのでどうってことないのだが、商品レビューという目線では残念なポイントだと指摘せざるを得ない。
保険料
『医療保険1095α』も『スーパー医療保険』と同じく、グレードによって3つのプランに分かれている。ベーシックな『シンプルプラン』、がん保障を上乗せする『がんプラン』、3大疾病に手厚い『3大疾病プラン』の3つだ。
これは『シンプルプラン』で十分だろう。医療費は医療保険に頼りっきりにするものではなく、可能な限り貯蓄(生活防衛資金)でやりくりする類の出費だ。
できるだけ貯蓄から捻出し、足りない分や崩したくない分を医療保険で補う。この感覚に賛同できるなら、特約は一切不要。もっとも安い『シンプルプラン』で十分という結論にたどり着く。
(△)定期型プラン(10年)がある
「医療保険は生活防衛資金が貯まるまでの一時しのぎ」という考えに基づくなら、終身型の他、定期型プランも用意している『医療保険1095α』は素晴らしい。
ところがどっこい。この商品は加入年齢に制限がある。『シンプルプラン』と『がんプラン』に入ろうとすれば50歳まで待たなければいけない。
50歳になって『シンプルプラン』に加入した場合の保険料は、男性4,173円、女性3,508円。しかし、50歳までには医療保険に頼らなくて済むほどの貯蓄はしておきたいので、このプランをおすすめするのは微妙だ。
『3大疾病プラン』なら加入できるが、特に必要を感じない保障までが付いてくる。それでも30歳代で加入すると男性で2,363円、女性で3,493円。やや高いが、1入院1,095日の保障能力を考えると、ぼったくりと感じるほどではない。
割り切って終身型を選ぶなら『シンプルプラン』がおすすめ
どうしても長期入院リスクに備えたいなら、割り切って終身型を選ぶのも(そこまで)悪くないかもしれない。貯蓄が貯まったら中途解約すればよいのだから。その際は『シンプルプラン』一択だ。保険料例を抜粋しておく(執筆・更新時現在)。
シンプルプラン | ||
---|---|---|
年齢/性別 | 男性 | 女性 |
20歳 | 2,368 | 2,568 |
30歳 | 3,173 | 3,333 |
40歳 | 4,613 | 4,368 |
50歳 | 6,878 | 5,958 |
60歳 | 11,173 | 8,928 |
(×)先進医療特約が10年で更新される
以前あった『楽天ロング』と違い、先進医療特約も付けられるのでなかなかよろしい。しかし、楽天生命の先進医療特約は、保険料が据え置きの「終身型」ではなく、10年ごとに値上(下)がりする「更新型」しか用意されていない。
現在のところ、先進医療のお世話になる確率は極めて少ないが、膨張し続ける医療費を見ると今後は増えるかもしれない。仮に自由診療がもっと盛んになったとき、先進医療特約の保険料が上がっては困る。
むろん、上がったとしても微々たるものであるという試算だが、消費者としては据え置きの終身型のほうが安心だろう。
まとめよう
医療保険に加入するロジックでうさたんが納得できるものは次の2つだ。
- 十分な貯蓄(生活防衛資金)が一切ないから短期入院ですら生活が詰む!(そのとおりだ)
- 短期入院なんか屁でもないけど長期入院は結構やばい!(そのとおりだ)
『医療保険1095α』は、運悪く不幸の宝くじ(たった1割の長期入院)を引いてしまったときのために入る保険だ。実際には、1年以上の長期入院でも貯蓄がしっかりあれば乗り切れるのだが、家計へのダメージを試算すると、ケースによってはそこそこ痛い。
長期入院の保障に特化していたらもっと良かったが、まあ、いろもん扱いされて売れないだろうから、現場の人の気持ちは分かる。
さいごに、この保険はネット完結型ではなく、営業パーソンと対面で契約を結ばないといけない。IT企業の楽天グループ様がなにゆえこんな形態を取っているのか。ネット保険ならもうちょっとお安くなるだろうに。
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