健康増進型と呼ばれる医療保険がある。中身は従来のものと変わらないが、被保険者の行動や健康状態によって保険料が割り引かれたり、還付金が支給されたりするため、お得に感じる人が多いようだ。
関係者や保険相談を得意とするFPとも議論した結果、うさたんの結論はタイトルどおり。不要!!まったくもって不要だと冷笑を浮かべて言ってやる。理由はこうだ。
保険会社が第三分野を売りたがる理由
前提として、保険会社の現状を少々悪意を交えながら解説しよう。
実は、保険屋という商売の未来はそう明るいものではない。そりゃあ食いっぱぐれはしないが、少子高齢化が進む日本では、これまでと同じやり方を続けていては先細りしかないのである。
そこで思いついたのが、医療保険やがん保険、就業不能保険といった第三分野の販売強化だ。基本的には一家の大黒柱にしか必要のない死亡保険と違い、性別や年齡に(あまり)関係なく売り込むことができるからだ。
とはいえ、統計上はほとんどの人が健康な若者は、医療保険なぞに興味はない。どうしたものか。うーん。と頭をひねった結果、昨今の健康ブームや自己責任論に着地するのである。
- 男女問わず若くても病気になることはある
- なってからでは遅い
- 所得だってまだ低いだろうし治療費に対する不安は小さなものではない
- ならば「あなたの健康を応援する」という立て付けの保険を出せばどうか?
- 病気を予防しながら、いざというときの備えにもなる
- 健康な人、健康を維持した人には特典として保険料を割引またはキャッシュバック!
とまあこんなストーリーで、従来と代わり映えしない医療保険を切り口を変えて販売しているだけである。健康増進とは魅力的な言葉を思いついたものだが、うさたんには「手を変え品を変え」のように見えるぞ。
要するに健康増進型保険は、今後、第三分野保険の販売強化を図りたい保険会社の「お試し商品」の一つである。お試しと言ったのは、まだまだ1つのジャンルとして確立されているとは言えないからだ。
肝心の各社商品も今んとこ微妙
健康増進型保険の魅力は保険料の割引やキャッシュバックにあるが、現在、販売されている商品をはどれも微妙と言わざるを得ない。インセンティブを獲得するための条件が厳しかったり、面倒くさかったり、意味あるそれ?と思わせるものだったり。
今からそれを証明しよう。
住友生命「Vitality(バイタリティ)」
契約時に「健康増進乗率適用特約」を付加することで「健康プログラム」という契約を結ぶ(利用料月864円)。これで保険料が15%引きになる。……は?
その後は健康になる努力を継続することでポイントを獲得でき、これが保険料の割引にかかわってくるのだが、驚くことに「フィットネスジムに入会する」ことで得られるポイントがある。フィ、フィットネスジムに月額1万円弱払って、年間数千円であろう保険料の割引を受けて嬉しいのか? 保険料のためにジムに入会しろと言うのか…?
笑わせてくれるのは、運動の種目と運動量によって獲得ポイントに差がある点。たとえばランニングは、10km以上21km未満だと600ptだが、21km以上42.1km未満だと倍の1200ptもらえる。……おい、運動はハードにやりゃあいいってもんじゃねえぞ。住友生命の商品開発部門は、NHKの『みんなで筋肉体操』を見たことがないのか。1日5分でもきちんと負荷をかければムキムキになれるんだよ谷本先生の講義受けてこい。
イベント/ pt | 100pt | 200pt | 600pt | 1200pt | 2000pt |
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ウォーキング | 4km以上10km未満 | 10km以上15km未満 | 15km以上30km未満 | 30km以上50km未満 | 50km以上 |
ランニング | – | 5km以上10km未満 | 10km以上21km未満 | 21km以上42.1km未満 | 42.1km以上 |
水泳 | – | 0.6km以上2.5km未満 | 2.5km以上5km未満 | 5km以上8km | 8km以上 |
サイクリング | – | 15km以上25km未満 | 25km以上50km未満 | 50km以上100km未満 | 100km以上 |
トライアスロン | – | – | 14km以上25.7km未満 | 25.75km以上51.5km未満 | 51.5km以上 |
なお、ジムに入らなくてもポイントは加算されるが、対応のウェアラブル端末が必要となる。うさたんの経験上、運動のたびにこの手のデバイスをわざわざ身につけるのは死ぬほど面倒くさい。
東京海上日動あんしん生命の「あるく保険」
1日平均8000歩以上歩くことが条件で、達成するとキャッシュバックが受けられる。キャッシュバックがあるのは2年後。つまり加入から2年間は計測期間となる。
2年間の総歩数を1日単位で割り出すのではなく、6ヶ月に1回を計測期間の単位とする。つまり2年間で4回の判定がなされるわけだ。2年後、4回とも平均8000歩を達成していれば満額のキャッシュバック、1回しか達成していなければ1/4のキャッシュバックとなる。
…ツッコミどころとしては、ややこしいわ!
また、日本人の平均歩数からすると、8000歩は十分達成できる範囲であると同社は主張するが、普段よりちょっと多く歩くだけで健康に結びつくとは限らないし、そんなエビデンスもない。
こんな保険にそそのかされて歩きすぎる人が出ないかも心配だ。だとえば、東京都健康長寿医療センター研究所の青柳幸利さんは、「その人に合った歩数がある」「1万歩は歩きすぎ」といった旨を雑誌のインタビューで答えている。
アフラックの「健康応援医療保険」
健康診断の結果、健康年齢が実年齢を下回っていれば、キャッシュバックを受け取れるというもの(年に1度)。同世代の人より健康なほうなのに、年齡で一律に保険料が上がることに納得できない人には嬉しいだろう。自動車保険でいう運転行動連動型のテレマティクス保険と似ている(=運転が上手い人ほど保険料が安くなる仕組み)。
しかしこのキャッシュバックは60歳までしか受け取れない。若く健康な間だけキャッシュバックで釣っておいて、受療率が上がりだす60歳以降は他の保険と変わらない代物と化すのだ。Why?! なぜ年寄りは応援してくれない!!
ちなみに、この保険は30日以内の入院を保障対象としており、入院給付金日額1万ではあるものの、全体的な保障内容は手薄い。保険は、滅多に起こらないけれど、起こると自分では対処しきれない金銭的負担に対してかけるものだという鉄則を思い出してほしい。
結論:健康増進は自分だけでもできるぞ
気になった3社を挙げてみて改めて思ったことがある。
健康増進型保険に加入し、保険料を払いながら、保険会社が定めた良いんだか良くないんだかわからないメニューをこなすより、自分で健康に注意を払って毎日を過ごすほうがコスパが高くないだろうか?
「健康増進」「あなたの健康を応援」などと保険会社に言われなくても自助努力で可能なことばかりなのである。
さあみんな、自ら運動し、予防医療にアンテナを張り、これからの人生をイキイキと若々しく生きようじゃないか。
健康増進活動っていうのは、自分一人ではなかなか続かないですよね?
保険とセットにして、色々サポートしてもらえるなら有り難いと思います。
それで得られるリターン(割引等)が低すぎるので、うさたんは全然ありがたくありません。