ウサギでもわかる「高額療養費制度」とは

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ここでは、医療保険やがん保険を検討するにあたって必ず出てくる「高額療養費制度」について解説する。

ウサギでもわかるように解説するので、安心して読んでほしい。

一言で説明!高額療養費制度とは?

高額になりすぎた医療費を払い戻してくれる、公的医療保険の制度のことだ!!

病院や薬局など、医療機関の窓口で請求された医療費の自己負担額が高すぎた場合、我々はそれを額面どおり負担しなくて済む。これは世界を見渡しても比肩するものはないほど素晴らしい制度だぞ。

「高額になりすぎた医療費」とは、具体的にどれくらいなのか?

君が請求された自己負担額が高額なのか高額でないかは、年齢や所得に応じて変わる仕組みだ。上限額は人それぞれ違うってことだな。

厚生労働省のサイトを見ながら、ちょっと表にまとめてみたぞ。

■70歳未満の場合
適用区分 自己負担額限度額の計算 多数該当(年4ヶ月目以降)
年収約1160万円以上
 健保:標準報酬月額83万円以上
 国保:年間所得所得901万円以上
25万2,600円+(医療費-84万2,000円)×1% 一律14万100円
年収約770~約1,160万円
 健保:標準報酬月額53万円~79万円 
 国保:年間所得600万円~901万円
16万7,400円+(総医療費-55万8,000円)×1% 一律9万3,000円
年収約370~約770万円
 健保:標準報酬月額28~50万円
 国保:年間所得210~600万円
8万100円+(総医療費-26万7,000円)×1% 一律4万4,400円
年収約370万円未満
 健保:標準報酬月額26万円以下
 国保:年間所得210万円以下
5万7,600円
住民税非課税の世帯 3万5,400円

70歳未満の場合、年収によって5つの区分に分けられる。最も多いのは太字で示した年収約370万円~約770万円の人たちなので、この区分で具体例を計算してみよう。

たとえば、総医療費が50万円だった場合……

《計算式》

8万100円+(50万円-26万7,000円)×1%=8万2,430円
50万円×30% – 8万2,430円 = 21万2,570円

というわけで、自己負担額は約8万円。残り6万7,570円が払い戻されるということだ。

しかも、だ。テーブルの一番右に「多数該当」とあるように、1年(直近12ヵ月間)以内に3回以上、高額療養費制度に該当すると、4回目からはさらに自己負担額が軽減される。先程の例でみると、自己負担は4万4,400円に下がり、10万円近以上が払い戻されるしくみだ。

すごいだろ? 医療保険やがん保険に不要論がつきまとうのは、この高額療養費制度が優秀すぎるからと言っても過言ではない。

家族の医療費も合算できる!

高額療養費制度は、同じ世帯の家族(=同じ健康保険に加入している家族)であれば、自分以外の医療費でも合算してくれるすごい野郎だ。

合算の対象は、受診者別にそれぞれ、2万1,000円以上の医療費がかかったとき。

つまり、私が窓口で47万9,000円請求され、私の妻が2万1,000円請求されたとき、うさたん一家の医療費は(47万9,000円+2万1,000円)で50万円かかったと見なしてくれ、夫婦合わせて9万4,097円しか負担しなくていい。

受診した病院が同じでなくとも構わないし、入院だとか通院だとか、受けた治療の内容が違っても合算の対象になる。いやはや、至れり尽くせりとはまさにこの制度のことだ。

ちなみに、うさたんに妻はいないがな。

70歳以上の方は、さらにお安く、使いやすく!

70歳以上の場合は、上限額や上限額の計算がまた違ってくる。こちらも表にまとめてみたぞ。

健康保険証、高齢受給者証

■70歳以上の場合
適用区分 自己負担額限度額の計算 多数該当(年4ヶ月目以降)
外来(個人ごと) ひと月ごと
年収約1,160万円以上
 健保:標準報酬月額83万円以上
 国保:年間所得690万円以上
25万2,600円+(医療費-84万2,000円)×1% 一律14万100円
年収約770~約1,160万円
 健保:標準報酬月額53万円~79万円 
 国保:年間所得380万円以上
16万7,400円+(総医療費-55万8,000円)×1% 一律9万3,000円
年収約370~約770万円
 健保:標準報酬月額28万円~50万円 
 国保:年間所得145万円以上
8万100円+(総医療費-26万7,000円)×1% 一律4万4,400円
年収約156~約370万円
 健保:標準報酬月額26万円以下
 国保:年間所得145万円未満
1万8,000円(年14万4,000円) 5万7,600円
住民非課税世帯のII 8,000円 2万4,600円
住民税非課税の世帯I 1万5,000円

平成30年度の見直しにより、70歳以上の場合も70歳以下と同じく5つの区分になった。特徴としては、現役並に稼いでいるご老人は70歳未満とあまり変わらず、それ以外の方は負担が軽くなる設計だ。

このサイトを見ているほとんどの人は70歳未満だろうと思うので、詳細は厚生労働省のページに譲るが、もしわからないことがあれば私に聞いてもらってもいい(コメントしてくれれば誠心誠意お答えする)。

70歳以上の高額療養費制度はしょっちゅう変更されるため、最新情報は厚労省のページを確認するのが手っ取り早いのだが、ハッキリ言ってわかりにくいんだよな。

こんな点に注意!

こんなに素晴らしい高額療養費制度も、最強無敵のスター状態ではない。以下の点を知らないと窓口で困ることもあるので、しっかり覚えておこう。

払戻対象は「月初から月末までの一ヵ月単位」である

高額療養費制度は、「月初から月末までの一ヵ月にかかった医療費」を軽減する制度だ。たとえば4月15日に入院し、翌5月15日に退院した年収400万円の人の医療費がこんな内訳だったとしよう。

  • 4月分(15日~30日):7万円
  • 5月分(1日~15日):8万円

この場合、どちらの月も高額療養費の上限に達していないため、請求は2ヵ月分合わせて15万円かかってしまう。

しかし、もしこの人が、4月1日~30日まで入院し、そのときの医療費が15万円だった場合は、高額療養費制度が適用されて6万7,570円で済んでしまうのだ。

入院期間、治療内容は同じでも、入退院する時期によって高額療養費はパワーを発揮できないということだな。即刻入院!みたいな緊急事態でない場合、入院は月初からがおすすめだ。

どんな医療費にでも使えるわけではない

高額療養費制度の対象になるのは、公的医療保険が適用される、つまり健康保険が効く医療にだけだ。したがって、入院中の食費や差額ベッド代(いわゆる個室)のほか、「先進医療」と呼ばれる試験中の医療に対しては支給されない。

「高額療養費制度があるからすべての入院・通院が約9万円以内で済む」というのは大間違いだと覚えておこう。

事前申請を済ませておこう

冒頭で述べたように、この制度は高額になりすぎた医療費を「払い戻してくれる」制度だ。言いかえれば、一旦は自分で全額負担することが前提で設計されているのだ(そして振り込まれるのは約2ヵ月後…)。

そんなの困る!という人は、事前に「限度額適用認定証」という書類を手に入れておこう。これを提示すれば、窓口での支払いは高額療養費制度で払い戻される分を引いた分、つまり純粋な自己負担額だけになる。

なお、70歳以上で、稼ぎが現役並でない方は気にする注意事項ではない。限度額適用認定証がなくても、健康保険証と高齢受給者証を提示すれば、純粋な自己負担額だけの支払いで済む。

まとめ

  • 高額療養費制度は民間の医療保険殺しの公的医療サービス
  • 自己負担の上限額は所得、年齢によって違う
  • 一般的な稼ぎの人なら一ヵ月(月初~月末)の医療費は約9万円で済む
  • 家族の医療費も合算可能
  • 健康保険内の治療にしか使えない
  • 事前申請しないと窓口での負担がデカい

ほか、実は介護保険制度との合算も可能なのだが、それについてはページを分けて解説したい。

■参考・関連リンク

高額療養費制度を利用される皆さまへ / 厚生労働省
高額療養費簡易試算 / 協会けんぽ

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