ここでは、保険料の支払が負担になってきたときなどに検討する「払済保険」という制度を解説する。
よく似た制度に「延長保険」もあり、非常にややこしいので、これとの違いも説明しよう。
一言で説明!払済保険とは?
保険料の払込をストップし、その時点の解約返戻金を使って、グレードダウンした保険に変更してもらう保険のことだ!!
「保険は解約したくないけど、保険料を払い続けるのはキツい……」なんて人は、払済保険にすることで、保障の一部を継続できるというわけだ。
解約返戻金を使ってどういうこと?
払済保険が使えるのは、解約返戻金がある終身型の保険や養老保険だけだ。
例えば、ノロマなカメ野郎が2,000万円の生命保険に10年間、加入していたとしよう。
しかし、ライフプランや仕事、家族構成の変化などにより、「2,000万円もいらなくね?」「毎月の保険料キツくね?」なんて思えてきた。
「いっそのこと保険やめちゃおうかと思って……」と保険会社に相談するカメ。すると、保険会社はこう提案してきた。
「カメさん、保険金を1,000万円まで下げるなら、今後は保険料をお支払いにならなくていいですよ。その代わり、今たまっている解約返戻金500万円を我々にください」
数字は適当だが、イメージとしてはこんな感じだ。要するに、その時点の解約返戻金を元手に保険を買い直す作業に近い。
カメは保険料を払わなくて済み、保険金もちょうどよい額になってほっと一安心。保険会社も、解約されて返戻金を支払わずに済んだのでほっと一安心。というわけだ。
このような仕組みなので、解約返戻金が少ない(たまっていない)と払済保険に変更できないこともある。
払済保険の特徴
保険期間は変わらない
払済保険は、グレードダウンした保険に切り替える制度だ。したがって、保険期間は変わらない。払済前の保険の満期が60歳までとしたら、払済後の保険も60歳までだ。
同じ保険か養老保険に切り替える
元の保険契約をグレードダウンさせるので、基本的には同じ種類の保険に切り替えることになる。つまり、解約返戻金がある終身型か、養老保険だ。「全然違う種類の保険には変更できない」と覚えておくとよいだろう。
特約は消滅する
特約はオプションなので、主体となるものが消えると消滅してしまう。払済保険は、「あくまで別の保険に入り直している」と考えると理解しやすいだろう。ただし、リビングニーズ特約は引き継げるのが一般的だ。
予定利率は同じ
特約は消滅するが、予定利率は元の保険を引き継ぐところが、払済保険のポイントだ。予定利率とは、保険会社が「あんさんから預かった保険料、最低○%で運用しまっせ」と約束している運用利回りのこと。
最近は超低金利時代なので底辺を這っているが、昔はそこそこ良かった時代がある。つまり、元の保険がかなり前に加入した保険なら、お得な時代の予定利率を引き継げるということである。
新しい保険に入り直すと、現在の予定利率が適用されてしまうので、同じコストを支払うなら払済保険のほうがお得、とも考えられる。
健康告知はいらない
新規で保険に入るわけではないので、持病や既往歴を報告する告知義務はいらない。新たに契約を結ぶより手続きが楽だろう。
延長保険とどう違う?
延長保険も、払済保険保険と似たような動機で使う人が多い。詳しくは延長保険のページで解説するため、ここではざっくりとその違いをまとめるに留める。
- 保険金(保障額)は変わらず、保険期間が短縮される
- 切替先は定期保険になる
「延長」と聞くと期間を連想するが、延長するのは保険金額という点に注意が必要だ。余談だが、FP(ファイナンシャルプランナ−)の資格試験はこの論点が大好き。あべこべに覚えている受験生が多いことを知っているのだろう。
まとめ
- 払済保険にすれば、保険料の払込をやめても保険契約を継続できる
- 解約返戻金を元手に別の保険に切り替える制度である
- したがって解約返戻金がない、もしくは少なすぎる場合、払済保険は使えない
- 保険金は元の保障額よりグレードダウン。でも保険期間は変わらない
- 予定利率を引き継げる。払済保険後の保険でも解約返戻金はたまる
- 特約は基本すべて消滅。アディオス!!
これくらい知っておけば十分だろう。なお、払済保険で保険を切り替えても、一定期間内なら前の保険に戻せる場合もある。これを保険用語で「復旧」というが、これはまた別ページで解説しよう。